Topic20 視察報告04「hometreatment 居住医療の視察」

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前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿なし | 投稿日時 2014/2/27 12:29
jksadmin  管理人   投稿数: 43
img530eade1757e8.jpg ベルリンからハンブルグはDBドィッチェ・バーンで1時間40分、更に列車とバスを乗り継いで、ラオエンブルグに着いたのは、お昼近くである。ヨハニテル病院のブ‐マさんと適度な仕事協会のロルフさんのお迎えと案内で視察スタート。居住医療で構築された地域社会システムを日常の活動、移動診療対応、仕事と遊びの施設、居住施設、交流及び生活支援の飲食レストランをつぶさに見聞している。レストランではアイントップフ(ドイツの煮込みスープ料理)を頂きながら、交流と質疑が行われる。合間に、エルベ川流域のこの地域の歴史散策。穏やかな川風が心地好く、しばしドイツの自然を賞味している。
img530eade1832eb.jpgその後、ゲーストハフトのヨハニテル総合病院へ向かう。途中、原子力発電所を経由、どでかい施設であるが、既に停止中で人影も少なく閑散とした感じである。病院到着、ハイスラー博士の玄関でのお出迎えを得る。参加メンバーの一人一人と握手を交わし、歓迎の意を伝えて頂いている。平服での穏やかな威厳に、メンバーは博士への垣根を瞬時に払い、早速プレゼンテーションに入っている。Post Psychiatrieポスト精神医学と命名された医療改革の実践を学ぶ、と云うのは初めてであり、日本代表団として視察目的への責任を持ち、ややこしいテーマに積極果敢にメンバーは取組んでいる。参加メンバーのこの姿勢には、深く敬意を払う所である。ハイスラー博士は、ポスト精神医学と云う医療哲学を創考し、実践方法を築いている。この哲学は師であるクラウス・デルナー博士の薫陶から生まれている。今回のプレゼンテーションでは、デルナー先生が2012年6月に上梓された“Helfensbedürftig支援による貧困“からの掘下げも原則的背景として挙げられている。
 “支援による貧困と云う言葉はドイツ語には無いけれど、生涯のテーマを纏めるに当って自分で創った言葉である”と云う書き出しで始まっている。60余年に亘る取組みで積み重ねた精神障害に対する本質の追求、原則の構築、治療の転換、そして詳細な対象への対症が展開されている、云わばデルナー博士による20から21世紀にかけるドイツ精神医学の集大成である。最後の9行は次の様に書かれて、擱筆されている。

img530eade18365d.jpg“Helfensbedürftig支援による貧困“  クラウス・デルナー 247頁
21世紀を認知症の世紀と呼ぶのは人間の歴史に適っている。
しかしこれまで明らかにしてきたが、認知症は変化しているが、社会全体と認知症は逆方向に変化している。次の表現はレヴィナス*が産出した新しい表現である。
人間は二つの根本的必要から生きている、一つは自立して生きると云う事に従うものであり、もう一つは他から援助を受けて生きると云う事に従うものであるが、後の方は自分が求めるのではなく、他者から求めさせられるのである。
*注 フランスの哲学及びユダヤ学者エマニュエル・レヴィナスは“変化する”で云っている。人間がすることと云うのは、他人の意に従いたがるものである。
Klaus Dörner Helfensbedürftig seite 247 (ドイツ語原文)
Wäre es menschheitsgeschichtlich nicht doch angemessen,unser 21. Jahrhundert das ?Jahrehundert der Demenz“ zu nennen?Denn die Demenz verändert,wie wir jetzt wissen,die gantz Gessellschaftß-und
sie verandert jeden Einzelnen von uns*,denn mit diesem Kunstwort bringt Levinas zum Ausdruck, dass wir mit zwei Grundbedürfnissen leben,einmal mit dem Selbstbestimmungs-bedürfnissendas wir brauchen,und zum anderen mit dem Helfensbedürnis,das wir auch brauchen, aber nicht von uns her,
sondern vom Anderen her.
*Der französische Philosoph und Rabbilehrer Emmanuel Levinas spricht vom ?veranderen“ ,wenn wir anfangen, uns vom ?Anderern“ her zu sehen; etwas in:Jeseits des Seins oder anders als Sein geshieht,Freiburg:Alber 1992

 日本語的表現で云うと“社会は自立に向っているが、認知症は依存に向ったままである”である、端的すぎて認識の表面しか伝えられないのが、若干心苦しい。ゲーストハフトでハイスラー博士は依存を自立に転換する事に立ち向かっているのである。檻からジャングルへ、と云うのは博士の表現である。奇抜ではあるが、成程!
 ラオエンブルグで雰囲気が開放的で患者、医師、職員、が対等にふるまっていると云う、現象を目にしたのであるが、現象の奥にある哲学がもたらしているのである、と腑に落ちている。プレゼン終了後、特別に精神病棟を見学させて頂いている。20ベットの緊急入院病棟には最新システムキッチンが備えられ、調理療法が行われている。病棟と云うよりも、専門料理教室の雰囲気で、病院臭さが全くないとの感嘆の声が挙っている。時間に追われ、最後は立ち話、歩きながらの質疑応答となりながらも、ポスト精神医学への日本からの視察把握は充実裡に終了している。帰路、列車内で議論が続き、近辺の乗客からたしなめられたが、反って我々の興奮を物語るものである。済みません、そして有難う、ドイツ!

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