ポスト精神医学8 「意識改革(2) 休暇旅行での変貌」その2

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前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿なし | 投稿日時 2014/8/13 13:15
jksadmin  管理人   投稿数: 43
(その1よりつづく)

9月11日 火曜日
今日から本格的休暇である。朝食後、浜辺への初めての散歩。トーマ夫人とマウテ夫人は水辺で遊び、プリンツ氏は水着を持ってくればよかったとぼやき、リーデル氏はユーゴ風の服装でスターの様に目立っていた。最年長のハルビッヒ氏はジャケット姿のきちんとした格好で、それを見たオルフェルト夫人はきちんとした服は置いてきてしまったと、不安がっていた。みんな、朝から晩まで休暇を楽しんでいる、誰も閉じこもってはいなかった。
プフルーク夫人はごく自然にあちこち散歩している。日頃不安定なリンケ氏がジェリコの唄を鼻歌交じりで奏で、とても楽しげである。付き添いのケディング氏は”皆さん、この休暇でとても楽しく満ち足りた良い気分に浸っている”と感想を述べている。

9月12日 水曜日
今日はブラク島への船旅。男性の装いはアノラックやセーターと短パン姿である。女性は薄いスラックス着用である。船から海に手を突っ込んでもいいかとブンダー氏が了解を求めてきた、船ではよくみんなから聞かれるそうだが、構わないとの事で、彼は腕のしょっぱい海水を舐めていた。途中患者達は今後の住まいの事を話しており、プフゥルク夫人とリーデル氏とシュルツ氏は一人で暮らしたがっていた。島に着いて、予約していた野外料理に向かった、道らしい道の無い所を歩いていったがザック夫人は助けを必要とはしなかった。さて昼食である。みんなで鯖のグリル料理を赤ワイン共に楽しんだ、手で食べると云うしろものだった、みんな満足していた、オルフェルト夫人は後で着ていたものを洗濯したとの事。食後、みんなは日光浴をしている。とても解放されている様子が伺われる。
ホテルに戻ってからはトーマ夫人はお酒を飲み、ブンダー氏は踊り、リンケ氏は買ってきた果物ジュースを飲みながら、故郷ポーランドを懐かしみ周りに話をしている、フィッシャー夫人は未だ船旅が続いていて日光浴と赤ワインを楽しんでいる、誰も彼女がこんなに飲めるとは知らなかったので、驚きである。ガウス氏はゆったりと過ごしており、イール氏とも打ち解けている。ヤコブ氏は既に日焼けが目立っている。バオアー夫人は明日は海水浴に行きたいと穏やかに話している。普段の病棟での行動とは打って変わった様子が散見されている。マウテ夫人はカッフェテリアでミルクスープと料理をみんなと一緒に取っている。プリンツ氏は30mは潜れると自慢している、出来たら周りの人はお代を払う事になるが、みんなは彼の夢物語と受け取って頷いている。オルフェルト夫人は素直には認めないが、いつも離れている息子が案じられるようである。

9月13日 木曜日
朝食を取るのは、みんなあまり時間通りではなくなっている。今日は終日海水浴である。ヤコブ氏は泳ぐのは30年ぶりだと張り切っており、みんなは彼の普段見せなかった様子に驚いている。リーデル氏はカッコいい泳ぎ手に見える。合計11人が泳いでいる。ガウス氏は生まれて初めて水着を着たようで肌は真白である、みんなはカッコいいと褒めている。エルデマン夫人はユーゴスラビアに来たら声がとってもきれいに成ったような気がする、と冗談めかして話している。ガウス氏は空気マットに乗ってゆったり浮かんでいる、フィシャー夫人はなんとビールを4杯も空けて、気持ち良さそうに酔っている。トーマ夫人は昨日の続きで日光浴を楽しんでいる。アーレルト夫人とオルフェルト夫人は今後は街中に一人で住みたいと望んでおり、街の地図で検討している。みんな、ここ数日ですっかりリラックスし、夜もぐっすりと眠れるので快適な様である。明日はモスタールへ行って見物と買い物である。

9月14日 金曜日
今日から看護師のグンジェビック夫人によるユーゴスラビア語入門が始められ、その後お小遣いが配られる。会話の練習は色々違いがあって、子供が初めての事を知るのと同じで時間がかかるが面白い様である。その後賑やかな市場と屋台の見物に出かける。まずみんなで買い食いを楽しんでいる。プフルーク夫人とアーレルト夫人はアイスを食べる。ここの市場は豊富な果物が安価で売られている。エルデマン夫人は”ここで暮らしたい、最高の人生が送れる”と感極まっている。今日は小グループに分かれての行動である。午後は再び海水浴でザンダー氏は早速泳いでいる、”ここは最高だ!”かなりはしゃいでいる様子である。リンケ氏、プリンツ氏、ガウス氏、リーデル氏はユーゴ人のお客との交流を図っている。第二次大戦でのドイツとユーゴスラビアとの間に起こったことなど心配する必要は無い、こだわりのない交流が行われている。リーデル氏は却って興味を持ってユーゴの新たな歴史と政治を築いているユーゴの指導者について、もっと理解したいと私に云ってきている。ヤコブ氏は長年グーテルスローでは階段の上がり降りばかりしているが、今回はうまくいっている水泳に凝りだしている。シュナイダー夫人は毎晩4つのメニューから異国料理を選び、とても楽しんでいる。

9月15日 土曜日
今日はシュナイダー夫人の誕生日である、朝食の際にお店からお祝いが届けられ、夫人は一緒の仲間をカッフェに招いている。リーデル氏は会話講座に集中し、学んだ事をみんな教えている。ここでは誰もがプライドを持った過ごし方をしているようである。休暇から戻ってからは、みんなで見聞きした事を書き記して記憶に留めている。
プフルク夫人とカオプ氏は今日は海水浴である。他の人達は日光浴を楽しんでいる。ヤコブ氏は日焼けを恐れていたが、大丈夫である。みんな自分で過ごし方を工夫している。ザンダー氏は薄いタオルにくるまってゆったりと過ごしている。ガウス氏は街中に出て市場を見物し、リーデル氏は辞書と首っびきで、イール氏はコーラが幾らかを正確に計算してユーゴスラビアでの収支を記帳している。リンケ氏はこの新しい環境に馴染み、ゆったりと過ごしている。

9月16日 日曜日
今日は雨模様である。会話講座の後、エルデマン夫人は小さい頃に覚えたポーランド語に似ているとの感想を話している。何人かは教会に出かけている。後の人達は貝殻博物館に出かけ、その近くにはフランシスコ修道院があるので車で足を伸ばしている。そこの異国的な美しさにはみんな驚嘆している。その後それぞれのグループで選んだカッフェを訪れているが、外貨の節約を意識しているようである。何人かの感想として、バウアー夫人によれば、この旅行は”手間いらずで安くて驚き!”である、例えば、いつもなら起きてベッドと部屋を片づけるのに30分は掛るが、何もしなくても片付いている、毎日そうで驚きなのである。シュルツ氏はバルカンで戦争の経験をしているが、今回の様な事は全く経験が無い事との事である。ガウス氏は退院して街中で暮らすのを試したいと話している。
トーマ夫人とウーデ夫人はレストランを選び食事をし自分達で支払っている。イール氏は来年はオランダに行きたいと希望を述べている。エルデマン夫人はやっぱりユーゴスラビア語はポーランド語に良く似ていると話している。夜にはみんなは外国旅行の意義について、じっくり考えているようである。患者達はここではいつも強制されずに考えなければならない、人と接触する度にどう話すか、お金を使う度に計算しなければならない、終日オリエンテーリングをしている様なものである、自分で動き、うまくやり、変な事が起こらないようにしなければならない。いつもいつもどうするかを判断しなけらばならない。従って”おかしくなっている暇はない”のである。

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